耳管開放症・耳管狭窄症の症状・原因・治し方

耳管開放症・耳管狭窄症とはどんな病気?

耳の内部の構造/耳管

耳管開放症(じかんかいほうしょう)と耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)は、耳と鼻をつなぐ耳管の機能異常により発症する病気です。

耳管は通常は閉じていて、唾液を飲み込んだりあくびをしたときに開き、耳の中の気圧を調整しますが、この機能が正常に働かなくなると、さまざまな症状を引き起こします。

耳管開放症

耳管がしっかりと閉じなくなった状態を「耳管開放症」といいます。若い女性や初老の男性に多いことが特徴です。

耳管狭窄症

耳管が塞がれたり、狭くなってしまった状態を「耳管狭窄症」といいます。中耳内に滲出液が溜まる滲出性中耳炎に至る場合があります。

耳管開放症・耳管狭窄症の症状

耳管開放症と耳管狭窄症に共通する症状として以下のようなものがあります。

  • 耳が詰まった感じ(耳閉感)
  • 音がこもって聞こえる
  • 耳鳴り

さらに、耳管開放症では自分の声や呼吸音だけが耳や頭の中に響く(自声強聴)症状などがあります。

耳管開放症の症状は立っているときに症状が現れることが多く、横になったり頭を下げたりすると一時的に症状が軽くなるという特徴があります。

耳管開放症・耳管狭窄症の原因

耳管開放症

体調不良やストレス、鼻やのどの炎症、急な体重減少や妊娠などによって、耳管が閉じにくくなることが原因とされます。

耳管狭窄症

風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、上咽頭炎などによる鼻やノドの炎症や、アデノイド肥大により耳管の周りが腫れて塞がることで発生します。

耳管開放症・耳管狭窄症の検査方法

耳管開放症・耳管狭窄症は耳管の機能不全によって生じるため、耳管の通気性や鼓膜の状態を評価することで診断を行います。

検査結果から耳管開放症や耳管狭窄症と、それらの症状が重なる他の疾患とを区別します。

聴力検査

聴力低下の有無を確認します。

鼓膜の動きの確認

片方の鼻を押さえて深呼吸をしてもらい、鼓膜が動くかを観察します。耳管開放症では呼吸に伴って鼓膜が動くことがあります。

ティンパノメトリー(鼓室圧検査)

耳の中の圧力を測定して、耳管が正常に開閉していないことを確認します。

鼻咽腔内視鏡検査

鼻咽腔(耳管開口部)を直接観察し、耳管の中が拡がっていなか(耳管開放症)、あるいは炎症・腫瘍・アデノイド肥大などによって耳管の通気性を妨げる病変がないか(耳管狭窄症)、を確認します。

体位変化試験

仰向けや座位での症状変化を確認します。

自宅にて自力でできる耳管開放症・耳管狭窄症対策

耳管開放症・耳管狭窄症共通
風邪・アレルギー性鼻炎予防

風邪やアレルギー性鼻炎などによって耳管開口部周囲に炎症を起こすことが原因となるため、手洗いやうがいを徹底、花粉症やハウスダストなど、アレルギーの原因を避けるよう心がけます。

十分な水分摂取

体内の水分バランスを保つことで耳管の粘膜の乾燥を防ぎます。

加湿器の利用

部屋の湿度を適切に保つことで、耳管の粘膜を保護します。

鼻うがい

生理食塩水や専用の鼻うがい液を使い、鼻腔内を清潔に保ちます。鼻づまりが軽減されると耳管の圧力が調整しやすくなることがあります。

生活習慣の改善

ストレスや睡眠不足は症状を悪化させる可能性があります。

耳管開放症
横になる

症状が強いときは、横になることで耳管が閉じやすくなります。

頭を低くする姿勢

頭を下げた姿勢(前屈み)をとると、一時的に耳管が閉じる場合があります。

体重管理

急激な体重減少は耳管開放症の一因となることがあります。無理なダイエットを避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。

耳管開放症・耳管狭窄症の主な治療法

耳管開放症

生活改善

体重を落とさない事や、水分をしっかりとる事などの生活指導を行います。

生理食塩水点鼻

症状のある側の鼻から耳管の方向へ生理食塩水を流し込みます。

内服薬治療

ATP製剤(血管拡張作用がある薬)や各種漢方薬を処方します。

テープによる処置

鼓膜に小さなテープを貼り、自声強調の原因である鼓膜の過振動を抑えます。

鼓膜換気チューブ留置術

鼓膜を切開し、小さなチューブを差し込む手術です。真珠腫性中耳炎の進行を防いだり、耳の圧迫感を軽減させられることがあります。

耳管ピン挿入術

鼓膜を切開し、耳管内にシリコン製のピンを挿入します。保存的治療や鼓膜換気チューブ留置術によって改善が見られず、検査などで重症の耳管開放症と診断された場合に適応になります。

耳管狭窄症

内服薬治療

耳管を塞ぐ原因となっている鼻の炎症(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)の治療を行います。

耳管通気

狭くなった耳管を広げて、鼓膜の内側まで直接空気を送ります。

手術

滲出性中耳炎を併発している場合、鼓膜切開術や鼓膜換気チューブ留置術を行い、中耳内に空気を取り込みます。

監修医師

耳科手術の名医・田邉 牧人

  • 田邉 牧人
  • ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 副院長
  • ・日本耳鼻咽喉科学会 認定専門医
  • ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
  • ・日本耳科学会 耳科手術暫定指導医
  • ・日本顔面神経学会 評議員
  • ・医学博士

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