睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気です。
医学的には、10秒以上呼吸が停止する無呼吸や、呼吸が弱くなる低呼吸が、一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上ある状態です。
睡眠中に呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。
これによって寝ている本人には自覚はなくても、脳や身体には大きな負担がかかります。脳も身体も断続的に覚醒した状態になるので、十分な休息をとることができません。
その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされ、仕事や勉強がはかどらないなど、作業能率の低下をきたします。
また、酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、以下のような合併症を誘引します。
- 高血圧
- 不整脈
- 心筋梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
- 脳梗塞
1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、上記の合併症や眠気による事故などを引き起こし、死亡率が高くなります。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠中に呼吸ができなくなるのは、睡眠中にノドの奥で空気の通り道がふさがってしまうからです。つまり、鼻づまりとノドの狭さが睡眠時無呼吸の原因なのです。
ノドが狭くなる要因はたくさんあり、その最も多い要因としては、肥満(気道周りの脂肪過多)が挙げられます。肥満によって体重が増加すると気道周りに脂肪が蓄積して気道が狭くなります。
この状態であおむけに寝ることでさらに気道が狭まります。狭くなった気道を空気が通るといびきが起こり、気道が完全に塞がれると無呼吸となります。
「肥満」は睡眠時無呼吸症候群患者さん全体の60%以上にみられるといわれています。ただし、痩せ型の方でも睡眠時無呼吸症候群の可能性はあります。気道が狭くなる要因としては他にも以下のようなものが挙げられます。
- 鼻づまり
- 軟口蓋(ノドチンコの粘膜)の過長
- 扁桃・アデノイド肥大
- 舌が大きい
- 下アゴが小さい
- 加齢(筋緊張低下)
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時の無呼吸の有無や程度の判定はPSG(ポリソムノグラフィ検査)という検査で行います。
まずは自宅でできる簡易検査を行いますが、結果のばらつきが大きい場合には、夜間入院で精密検査を行います。
睡眠時無呼吸症候群の治療
生活習慣の改善指導(減量、節酒など)
肥満によるノド周辺の脂肪が原因となっている場合、減量を医師より勧めます。減量によって脂肪が減ると上気道が拡がり、無呼吸は起こりにくくなります。
また、横向きで寝る、就寝前の禁酒、禁煙など、生活習慣を整えることで睡眠中の無呼吸を予防します。
マウスピース
軽症から中等症の場合に用いられます。睡眠中に装着し、ノドを広げることで気道を確保します。
CPAP療法(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)
中等症から重症の場合に用いられる、現在最もよく行われている治療法です。
睡眠中に鼻にマスクを装着し、常に空気を送り込み続けることで、その風圧で粘膜が気道を塞ぐのを防止する方法です。
高い効果が期待できますが、気道の塞がりを根本から治すものではありませんので、平行して継続的な通院治療が必要となります。
CPAP療法は鼻から空気を送り込む治療法のため、鼻づまりの症状があると十分な効果が得られません。このため、鼻づまりのある場合はまずは耳鼻咽喉科を受診する必要があります。
鼻づまりの治療
鼻づまりにより睡眠時の無呼吸は悪化します。耳鼻咽喉科で鼻づまりを伴う鼻疾患の治療を受けます。
鼻茸・鼻中隔湾曲症などの外科手術が必要な疾患の場合は手術により鼻づまりを改善します。
手術による治療
口腔内が狭い、扁桃が大きい、アゴが小さいなどが原因の場合、手術によって原因の除去を検討します。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック
以下のような症状が睡眠時無呼吸症候群に当てはまります。複数該当する場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみましょう。
寝ている間
- いびきをかく
- いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかき始める
- 呼吸が止まる
- 呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
- むせる
- 何度も目が覚める(お手洗いに起きる)
- 寝汗をかく
起きたとき
- 口が渇いている
- 頭が痛い、ズキズキする
- 熟睡感がない
- すっきり起きられない
- 身体が重いと感じる
起きているとき
- 強い眠気がある
- だるさ、倦怠感がある
- 集中力が続かない
- いつも疲労感がある
おうちでできる睡眠時無呼吸の対処法
減量
食事制限と運動で減量します。減量ができても、その体重を維持することが大切です。
禁煙
喫煙は、血中の酸素を低下させ、咽喉頭部の炎症をおこし、睡眠中の無呼吸に悪影響を与えます。
飲酒や睡眠薬を控える
アルコールや睡眠薬は、のどやあご周りの筋肉の力が抜けるはたらきがあり、気道を維持しづらくなります。
就寝時の姿勢
仰向けで寝ると舌や咽頭の上側の筋肉や軟口蓋は、咽頭の下側と後側の壁にくっつこうとして気道が狭くなります。身体を横向きにして寝ることでこれをいくらか軽減できます。抱き枕を使うなど、横向きで寝られる工夫をしてみましょう。