ノドが痛い、イガイガ・ムズムズするなどの症状について解説しています。
ノドとはどこを指すか
まず、ノドとはどこを指すのかの話をしましょうか。
口を開けて見えているのは、主として口の中、口腔(こうくう)と言います。
その奥がノドなのですが、その境目は、ノドチンコだと思ってください。ノドチンコ(これってもっと上品な呼び名はないものでしょうか。医学用語では口蓋垂(こうがいすい)と言います。ドイツ語では『ノドのつらら』と言うそうです。こっちのほうがおしゃれですよね)の脇のほうにある扁桃腺(正式には口蓋扁桃といいます)は咽頭に含まれ、扁桃より奥が咽頭と言われるところです。咽頭の奥が喉頭です。
ノドとは、一般的に、この咽頭と喉頭とを指します。
咽頭と喉頭の境界はとても複雑なので、喉頭は口を開けても見えない奥の粘膜という程度にご理解ください。
のどぼとけは甲状軟骨という喉頭の一部で、のどぼとけの内部には声帯という音を発するところがあります。ヒトの顔と首を横から見た図を模式的に書くと、図のようになります。少しは理解の助けになりますでしょうか。
喉頭は呼吸や発声のときには気管への空気の通り道となり、食物を飲み込むときには、気管に水や食べ物が入らず、確実に食道に送り込むという重要な役割があります。
ノドの痛みを起こす原因
大部分の原因は、ノドの炎症です。咽頭や喉頭の粘膜が炎症を起こすことによって痛みが出ます。
ノドの痛みというのはごく一般的な症状です。誰もが何度も繰り返し経験している状態であり、体調不良の代表選手といっても過言ではありません。なぜこうもノドは炎症を起こしやすいのでしょうか。答えは簡単です、異物が侵入してくる入り口だからですね。
鼻や口は外界からガス(空気)や異物(飲み物、食べ物)を取り入れる入り口です。その銀座通りの門番が咽喉頭なのです。だから、ウィルスやバイ菌が入ってきたら、ノドでそれらの外敵の侵入を阻止せねばなりません。免疫機構が外敵と対決する場所がノドというわけです。
炎症とは
炎症とは、外敵が侵入してきた場合の免疫の働きそのものです。
外敵が察知されると、それらを駆逐するための免疫細胞がたくさん集まってきます。細胞や液体がたくさん集まれば、容積が増して腫れるということですね。そして、それらの免疫細胞を急速に大量に集めるために血流が豊富になります。赤くなるということです。
それらが神経終末を刺激すると痛みが出ますし、免疫細胞の増加に伴って発熱中枢が刺激を受け、熱が発せられます。以上の反応で、赤く腫れ、痛みと熱が出るというわけです。
ノドの粘膜の乾燥
ノドの粘膜の乾燥があると痛みが出ることがあります。典型例は、夜、鼻がつまったまま寝ると、寝ているあいだ口呼吸になり、朝方、ノドの乾燥で痛みが生じるのです。
鼻づまりがなくても、唾液分泌が減少すると、粘膜の乾燥からノドの痛みが出るのですが、閉経後の高齢女性に多いものです。
大声の出しすぎ・長時間のしゃべりすぎ
大声で歌を歌ったり、スポーツの応援を行った際にノドが炎症を起こすことがあります。
ノドの痛みの他、声のかすれや声が出にくいなどの症状が生じる可能性があります。
ノドへの刺激
タバコや酒、辛い食べ物などもノドの痛みの原因となります。
逆流性食道炎
また、逆流性食道炎といって、胃酸が食道に逆流し、隣接する喉頭にまで炎症が及び場合があります。
痛みになることはあまりありませんが、長期のノドの不快感につながることが多いものです。
喉頭癌
ノドの痛みを起こす原因で炎症以外のものはそう多くはありません。しいて挙げると、ノドの癌でしょうか。
しかし、癌は初期には痛みのないことがほとんどで、進行癌のほうが痛みの出る確率は高くなります。
ノドの炎症を起こす病気
ノドの炎症が症状としてあらわれる病気について紹介いたします。
咽喉頭の一般的炎症
風邪
人類が罹る最も多い病気、風邪の主要な病態はこの咽喉頭炎といっていいでしょう。
風邪ウィルスという名前のウィルスはなく、コロナウィルスをはじめとする種々のウィルスが風邪の原因になっているとされています。
鼻炎、副鼻腔炎を併発することも非常に多いです。咽喉頭炎から気管にまで炎症が及ぶと激しくガンコな咳になったりします。
アレルギー性鼻炎(花粉症)
花粉やダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎は鼻の病気のイメージが強いですが、鼻とノドは繋がっているため、ノドの痛みや痒みがあらわれる場合があります。
また、アレルギー性鼻炎によって鼻が詰まって口呼吸になると、ノドの乾燥によって痛みが生じます。
声帯ポリープ
一過性の声の乱用が原因といわれています。カラオケ、怒鳴り声、演説などの急激な発声が誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて内出血を起こし、ポリープを形成するという説が有力です。
口蓋扁桃を中心とした炎症
急性扁桃炎
口蓋扁桃に急性の炎症を起こした状態を急性扁桃炎と言います。よくある病気の1つですが、ときに炎症が強く、高熱や激しいノドの痛みが数日以上続く場合があります。
強い炎症で激しい痛みが出やすい代表的な原因としてはアデノウィルスや溶連菌による炎症があります。
また、上記2つほど多くはありませんが、EBウィルスというウィルスが原因での扁桃炎も炎症が長引くことがあります。このEBウィルスによる炎症は伝染性単核球症という病名になり、全身のリンパ節の腫脹とときに肝機能障害を起こすことがあることが特徴的です。
また、扁桃炎がひどくなり、扁桃の周りにまで炎症が広がってしまう場合があります。
扁桃周囲膿瘍
1つは、扁桃周囲膿瘍といい、口蓋扁桃の周囲に膿がたまってノドチンコの横がひどく腫れます。
ひどい場合には軟口蓋の粘膜を切開し、膿を出さないといけない場合もあります。
喉頭浮腫
扁桃の炎症が喉頭まで拡がると、喉頭浮腫といって喉頭の粘膜が水膨れ状態になることがあります。
喉頭、特に声帯のあたりは呼吸の空気の通り道として最も狭いところなので、そこで浮腫が起こると、気道が閉鎖し、呼吸困難が生じ、命に関わる場合があります。
ノドの炎症で命に関わる病気
急性喉頭蓋炎
喉頭蓋という喉頭の一部が腫れ上がる炎症です。気道をふさぐので窒息死の危険性があります。ノドの痛みも非常に強く、ものが呑み込めなくなったりする場合も少なくありません。
そのため、高度になると、ツバも呑み込めないのでよだれが出ます。喉頭の炎症なので、口を開けただけでは見えません。ノドの高度な痛みでは、常に念頭に置くべき病気です。
副咽頭間隙膿瘍・後咽頭間隙膿瘍
のどの粘膜の奥に膿がたまり、首の奥まで炎症が広がって様々な症状を引き起こします。稀な病気ですが、重篤化することがあるので注意が必要です。
口腔・首の病気
ノドの痛みを起こす病気ではありませんが、口の中・首・ノドのどこの痛みなのか区別がつかないことがあり得ます。
アフタ性口内炎
口腔の粘膜が炎症を起こすと、当然、口腔の痛みが生じます。
代表的なものがアフタ性口内炎と言って、アフタ(粘膜に白いクレーター状の欠損)ができ、食べ物がしみたりして非常に痛むことがあります。ウィルス感染やビタミン等の不足によっても起こるとされています。
舌炎
舌に炎症を越した場合は舌炎です。
歯の痛み
口の中にはほかにも重要な器官があります。歯です。それにまつわる痛みもごく一般的です。
う歯(むしば)、歯肉炎、歯周組織炎、歯根嚢胞など、これらは、残念ながら耳鼻科の守備範囲外です。
頸部リンパ節炎
首の痛みで最も多いのは、頸部リンパ節炎です。首にはリンパ節と言ってコメ粒ほどのリンパの節が数百、連なっています。
ノドなどの炎症で反応性にリンパ節がはれる場合と特に原因となる病気がなくリンパ節そのものが炎症を起こす場合があります。
原因はわからないことが多いのですが、ウィルス性で起こっていることことが多いはずです。
顎下腺炎
下あごの内側に唾液腺の1つである顎下腺があります。
顎下腺が炎症を起こす場合があり、その原因の多くは唾液の出口が唾石というカルシウムやリン酸の塊でふさがれてしまって起こります。
甲状腺炎
甲状腺にウィルス性の炎症が起きる場合が稀にあり、亜急性甲状腺炎と言われます。1,2か月以上、炎症が長引くことがあります。
急性甲状腺炎といって、甲状腺に細菌が入り込み、強い炎症を起こすことがあります。頸部の皮膚を切開して膿汁を出すという手術まで必要になることも少なくありません。
正中経嚢胞・側頸嚢胞
頸の真ん中とか脇に、嚢胞と言って袋状のハレができることがあります。炎症を繰り返したり、大きくなる場合は手術で摘出することになります。
ノドが痛いときにおうちでできる対処法
耳鼻咽喉科をすぐに受診できない時に、おうちでできる対処法をご紹介いたします。
ノドに負担をかけない
声帯を休ませる
大声を出す・長時間しゃべるなどを避け、声帯に負担をかけないようにします。
タバコ・酒・辛い物を避ける
刺激物はノドに負担をかけるので避けるようにしてください。
ノドの乾燥を防ぐ
こまめにうがいをする
うがいによって、ノドに潤いを与えることができます。それと同時に、病原体や異物を洗い流すことができます。
マスクを着用する
マスクをつけることによってノドの潤いを保ちます。
加湿器を使用する
加湿器を使ってお部屋の湿度を保つことも、ノドのケアには有効です。
ノドの痛みの治療について
上記のようにノドの痛みの原因は多岐にわたります。それぞれの原因に応じた治療を受けて頂くことになります。ここで強調したいことは、ノドの治療を専門的に行うのは、耳鼻咽喉科であるということです。
上にたくさん挙げた病気はごく一般的な風邪から極めてまれな病気までそのすべてが耳鼻科の担当する病気であり、耳鼻科でないと診断がつかない場合も少なくありません。 ノドの痛みがある場合には耳鼻科を受診するこの意識が大切なのです。
大阪和泉市の老木医院では喉の手術のご相談を承っております。一度お問い合わせください。
監修医師
- 老木 浩之
- ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 理事長
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
- ・医学博士