漏斗胸とはどういうもの?
漏斗胸とは胸の中心、みぞおちあたりの骨がへこんだ形になっている状態のことを言います。仰向けに寝転ぶとみぞおちあたりに水がたまるほどのくぼみができます。
なぜ漏斗胸になるの?
呼吸で空気を取り込むとき、胸(胸郭)が膨らみ、肺にたくさんの空気を入れようとします。
しかし、のどや鼻の空気の取り入れ口(気道)が狭くなると、十分に空気が肺に入っていきません。膨らんでいる胸郭内の空気が薄くなる、つまり、胸郭内が陰圧(外よりも気圧が低い状態)になるのです。
すると、胸郭で一番弱くて柔らかいところが陰圧のため、へこみます。骨や軟骨がやわらかい幼児期にこのような呼吸が何か月も続くと、胸郭がへこんだままのカタチに骨が固まってしまいます。これが漏斗胸です。
イビキや睡眠時無呼吸のある成人でも気道が狭くなっていますが、大人の場合は骨格が固く完成されているので、陰圧で胸郭のカタチが変わることはありません。
漏斗胸の原因は、幼児期のノドにある?
漏斗胸の原因の1つは、空気の取り入れ口(気道)がせまくなっていることです。
幼児期で気道が狭くなる原因のほとんどは、扁桃腺(口蓋扁桃)とアデノイドが大きいことです。アデノイドの正式名称は咽頭扁桃といいますから、扁桃腺もアデノイドもどちらも扁桃組織です。扁桃組織は生理的に、3歳ごろから徐々に大きくなり、5,6歳くらいまで成長を続けます。
その大きくなる程度やスピードは人それぞれ、個人差が大きいのです。5,6歳を過ぎると扁桃の成長はストップし、多くの場合は徐々に縮小していきます。あまり縮小しない場合でも体全体が大きく成長するので、扁桃は相対的に小さくなり、気道を狭くすることはほとんどなくなります。
しかし、成長とともに悪影響がなくなっていくからといって、幼児期の胸郭のへこむ呼吸を放置していると、みぞおちあたりがへこんだままのカタチに骨が固まってしまいます。
上記のような気道の狭さとは関係なく、
漏斗胸の症状は?
最も大きな症状は外見上の問題ということになるでしょう。特に女児の場合は将来の胸の形にも影響することがあるため、安易に考えるのは禁物です。
高度な場合には呼吸や嚥下にも悪影響があると言われています。
漏斗胸の治療は呼吸器外科へ相談ください
ほぼ唯一の治療が手術です。当院では漏斗胸の治療は行っておりません。
手術は治療の負担が大きいため、まずは予防を心掛けることが大切です。
漏斗胸は幼児期の予防が一番!!
幼児期に、アデノイドや扁桃腺が大きくて、漏斗胸になりかけている場合には、アデノイド切除術や扁桃摘出術で漏斗胸が予防できる可能性があります。
老木医院ではアデノイド切除術を行っております。(扁桃摘出術は行っておりません。)
アデノイドや扁桃腺が大きいと、他にも様々な症状を引き起こします。
- 常に口を開けている
- イビキ・睡眠時無呼吸がある
- 食べるのが非常に遅い
- 食が細く、やせていて身体が小さい
- 副鼻腔炎を起こしやすく、治りにくい
- 滲出性中耳炎の原因になる
これらの症状は1つでもあると非常に不快なのですが、幼児はそれを訴えることができません。特に、漏斗胸は骨が固まってしまうと、一生治ることはありません。
外見上のストレスは日々の生活で継続的につらさを感じるものです。親のできる対策として、注意を払い、予防策を検討しましょう。
監修医師
- 老木 浩之
- ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 理事長
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
- ・医学博士