顔面神経麻痺とは
顔面神経は、主に顔の表情を作る筋肉を動かす作用をしています。
左右1本ずつの神経が顔の皮膚の奥にあります。顔面神経からは脳から出て内耳道という骨の管を通り、さらに側頭骨という耳の周りの骨の中を通ります。その骨から出るとすぐに耳下腺という唾液腺の中に入り、その中で枝分かれしながら、顔面の皮下を走っています。
その枝が前頭筋(額のしわよせの筋肉)、眼輪筋(まぶたを閉じる筋肉)や頬、口輪筋(口を閉じる筋肉)などに到達し、それらの筋肉の動きを制御しています。他にも、顔面神経には、唾液や涙の分泌神経、味覚に関する神経も入っています。 以上のように、顔面神経は耳の近くと耳下腺の中を通っています。耳はもちろんのこと、耳下腺も私たち耳鼻科医の専門領域です。
つまり、顔面神経に関わるほとんどの病気は耳鼻科医の守備範囲ということになります。
顔面神経麻痺の原因
顔面神経麻痺の原因には、多くのものがあります。しかし大きく分けると、抹消の神経が障害となるものと中枢の神経が障害となるものがあります。
抹消の障害によるものでハント症候群とベル麻痺とが多くみられて全体の70%程度を占めています。原因として次のような事が考えられます。
ベル麻痺
まずベル麻痺ですが過去に感染した「単純ヘルペス(特)型ウイルス」が再び活性化して発症すると考えられています。このウィルスはほとんどの人が感染します。
幼児期に口内炎や舌にできる水泡など発症し、そのあと治癒したが体内に潜んでいる場合があります。
しかしこれがすべての原因であると解明されたわけではありません。原因がわからない場合も多くあり、原因が判明しない顔面神経麻痺についてベル麻痺としています。
ハント障害
次にハント症候群と言われるものがあります。これはベル麻痺と同様に以前感染したウィルスによって引き起こされるもので、水痘帯状疱疹(すいとうたいほうじょうほうしん)ウィルスというものが再度活性化することによっておこります。
顔面神経麻痺の種類
顔面神経麻痺
顔の左右どちらか半分の動きが悪くなります。ごく軽いものから重度のものまで、その程度は様々です。ウィルス感染や血行障害が原因になることが多いとされています。原因不明であったり、ときには中耳炎の悪化や腫瘍が原因になることもあります。
通常は飲み薬や点滴で治療をしますが、ときには手術になる場合もあります。
顔面けいれん
目尻や口の周囲などがピクピクと動いてしまう病気です。この病気は、かなり難治療でやっかいなのですが、最近では、神経の麻痺作用のある薬を直接注射する方法が開発されています。
顔面神経麻痺の検査
40点検査法(柳原法)
麻痺の程度を測る40点法(柳原法)というものがあります。10項目を3段階で評価し点数付けすることに麻痺の程度を知ります。
聴力検査
めまいや難聴の有無を調べる聴力検査。
このような検査を行うことにより麻痺の程度を知り、予後の予測を知ることができ、患者が治癒するまでの目安となる期間も知ることができます。これらの検査を行い具体的な治療に入っていきます。
検査
血液検査を行いウィルス感染の有無を判定します。
アブミ骨筋反射検査
大きな音を聞かせて鼓膜の動きを観察します。
顔面神経麻痺の治療・手術
薬物療法
実際に治療を開始してから薬の効き目がでてきて炎症が治まってくるまでに時間がかかるときもあるため、投薬後数日間は、炎症が治まらず悪化する場合もありますが、治療を続けていくうちに症状は、改善されていきます。
投薬する薬には、ステロイド薬、抗ウィルス薬があります。しかし、先に述べましたように早期治療ができず炎症が大きく広がってからでは、効果が出にくくなります。発症してから5日から1週間までに薬で治療を開始することが重要となります。
ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌス毒素)を顔面の筋肉に注射することで、表情筋を一時的に麻痺させ、のちにリハビリテーションを行う方法があります。
ボトックス注射の効果は3~4ヶ月間持続すると考えられています。病的共同運動や顔面拘縮は再発するため、多くの場合は再注射が必要になります。
手術
顔面神経減荷術
神経周囲の骨を削り除去することで圧迫から逃れ血流を改善していく手術です。神経の変性をくいとめて顔面神経麻痺を治療します。