耳から耳の穴、その奥の鼓膜に至るまでの部分を外耳といいます。鼓膜から奥は中耳になります。
外耳のどこかで炎症が起こった状態を外耳炎、特に耳の穴の中の皮膚に炎症が起これば外耳道の炎症なので外耳道炎といいます。中耳炎と並んで、耳の痛みの原因になる状態です。
外耳炎・外耳道炎の原因
耳掃除のしすぎ
最も多い原因は、耳掃除のしすぎです。耳かきで外耳道の皮膚が刺激性の炎症を起こす場合と傷がついてバイ菌が入り、細菌性の炎症を起こす場合とがあります。
竹や金属製のような硬い素材の耳かきで起こることが多いのですが、綿棒でも触り方や頻度によっては起こります。
長時間のイヤホンの使用
昨今、リモートワークが増えたことにより長時間イヤホンを耳に付けたままにしている方も多いかと思いますが、長時間のイヤホンの使用は耳の内部の皮膚が刺激されることで外耳炎を発症する可能性があります。
耳の中に入れるタイプのイヤホンの長時間の使用を避ける、長時間使用する場合はスピーカーやヘッドホンを使用するなどするのが好ましいです。
外耳湿疹
皮膚のアレルギー反応である湿疹が外耳に起こることがよくあります。季節に関係なく起こる場合と季節性のもの、また花粉症の一症状として出る場合もあります。
湿疹がひどくなって皮膚の表面が荒れ、そこからバイ菌が入って外耳炎が起こります。また、湿疹では激しいかゆみが出る場合が多いので、やはり皮膚が痛み、そこからバイ菌が入ります。
慢性中耳炎
慢性中耳炎で継続的に耳漏が出ている場合には、その耳漏の刺激で外耳道の皮膚に炎症が起こります。
真菌(カビ)
外耳道炎はバイ菌だけでなく、真菌(カビ)による炎症が起こることも珍しくありません。この状態を「外耳道真菌症」と言います。
カビの炎症の場合には、乳白色や真っ黒な耳カス状の耳漏が大量に出るのが特徴です(カビの種類によって色合いが違ってきます)。カビの炎症は、通常のバイ菌よりもガンコで(治るまで長期間かかることが多いです)、繰り返しがちなことも特徴です。
冷水などの刺激
潜水士やサーファーのように慢性的に冷水が耳に入り、刺激を受け続けていると、外耳炎をおこしやすくなります。また、プールの水に入っている消毒薬が刺激となって外耳炎が起こることもあります。
耳垢
耳垢を掃除せず、長年放置していると外耳道に耳垢が充満し、完全に耳の穴が詰まって耳垢栓塞という状態になることがあります。その状態を長期間続けていると、耳垢の刺激によって外耳炎を起こす場合があります。
さらに病状が進行すると外耳道真珠腫という状態になり、外耳道の皮膚だけでなく骨まで解けるほど炎症が進む場合があります。
外耳炎・外耳道炎の症状
炎症の程度に応じて痛みが出ます。かゆみが出ることもあります。外耳道炎がひどくなって皮膚が腫れたり、皮下に膿がたまると外耳が閉鎖してしまい、聞こえにくくなったり、音がこもったりします。
特にカビによる炎症の場合には多量の耳カス様の耳漏がたまることが多いので、耳の詰まり感が強く出ます。
外耳炎・外耳道炎の治療
治療方法は原因や炎症の程度によって異なります。
軽い外耳道炎
軽い外耳道炎であれば、耳掃除をしないようにするだけでも自然に治ります。痛みや炎症による外耳道皮膚の赤みや腫れに対してステロイド入り軟膏や抗生物質入り軟膏を状態に応じて塗ります。
炎症や痛みが強い場合
炎症や痛みが強い場合には抗生物質や痛み止めの内服薬を処方します。耳の穴の外付近で皮膚の下に膿瘍といって膿がたまる程炎症が高度な場合には、皮膚切開で排膿する処置や抗生物質の 点滴が必要な場合もあります。
カビによる炎症の場合
カビによる炎症の場合は、多量の耳漏を溜まったままにせず、取り除く処置が必要なので、頻回の通院処置が必須です。
原因として、湿疹がある場合には抗アレルギー薬の内服を併用し、慢性中耳炎による耳漏が原因の場合にはその治療をしないと根本的な解決には至りません。
外耳道真珠腫
外耳道真珠腫という状態は専門的医療機関でないと、診断や治療が難しくなります。ガンコな耳垢や耳垢処置のとき激痛が走るようなら、外耳道真珠腫を疑い他の医療機関で相談してみてもいいかもしれません。
おわりに
外耳炎の一番の原因はやはり耳掃除のしすぎです。硬い耳かきは厳禁、とはお話しさせていただくものの、耳掃除を全くしないのも考え物です。
やはり耳の奥まで触らず、耳の穴の近くでとどめておくこと、やさしく触ること、頻回に行わないことを心がけていただきたいと思います。
耳垢がたまっているのが心配な場合には、ご遠慮なく耳鼻科を受診してください。耳掃除だけを目的に受診していただくことは、私は大歓迎です。それを嫌がる耳鼻科医は耳垢除去の処置が下手な医者だと判断していただいて間違いありません。
監修医師
- 老木 浩之
- ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 理事長
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
- ・医学博士