動画でも概要を解説しております。よろしければご覧くださいませ。
鼻中隔湾曲症とは
鼻の左右の穴の間の壁(鼻中隔)が曲がっており、かつ鼻づまりや嗅覚障害など、日常生活に支障をきたす症状が現れている状態を「鼻中隔湾曲症」と呼びます。
多少の湾曲は誰にでもあることで問題ありません。風邪、アレルギー性鼻炎ではないのに鼻づまりがある、という方は一度耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
鼻中隔湾曲症の原因
鼻中隔を構成する3つの骨「鼻中隔軟骨」「篩骨正中板」「鋤骨」は、成長するスピードが微妙に異なり、左右に曲がって形成されることがよくあります。
結果、鼻中隔が曲がってしまうので、お子様に鼻中隔湾曲が認められることはほぼなく、通常は成人後に気づきます。
鼻中隔湾曲症の症状
もっともよく見られる症状は、鼻づまりです。さらにそれに伴って以下のような症状が現れる場合があります。
- 頻繁に鼻血が出る
- 嗅覚障害
- 味覚障害
- 頭痛
- 肩こり
- ひどいいびきやくしゃみ
また鼻づまりによって口呼吸の習慣が身についてしまうことから、集中力の低下なども指摘されています。
症状が進行すると、鼻の中の通気性の悪化により菌が繁殖しやすい環境へと変わり、副鼻腔炎が引き起こされるケースもあります。
鼻中隔湾曲症の検査
医師による鼻中隔の観察、内視鏡による検査、鼻づまりの程度の計測、また場合によってはCT検査などを経て診断します。慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの合併症がないかどうかも確認します。
鼻中隔湾曲症の治療・手術
鼻中隔湾曲症は、骨・軟骨の形態のバランスという物理的な問題を原因としていますので、根本的な治療のためには手術が必要です。
鼻中隔矯正術
「鼻中隔矯正術」と呼ばれるこの手術では、鼻の穴から挿入した器具で、鼻中隔の軟骨を切除し、真っ直ぐになるよう整えます。
慢性副鼻腔炎を合併しているケースではそちらの手術も同時に行うことがあります。手術後は、スポンジを摘めて鼻中隔軟骨を補強すると同時に、粘膜を修復します。
また、この手術は成人の方でなければ受けられません。鼻中隔をはじめとする顔面の骨格が未完成の状態では、その後の骨の成長に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
粘膜下下鼻甲介骨切除術
鼻中隔湾曲症は鼻中隔の外側にある下鼻甲介という突起が炎症を引き起こすため、「鼻中隔矯正術」に併せて、その骨を切除して鼻の通りをよくする「粘膜下下鼻甲介骨切除術」という手術が行われることが多いです。
※なんらかの理由により手術が受けられない場合には、薬を使って一時的に症状の緩和することも可能です。ただし、長期間の薬の使用は逆に症状を悪化させるリスクがありますので、あまりお勧めできません。薬による対症療法をご希望の方は、定期的に診察を受けていただき、その経過を注意深く観察する必要があります。
鼻中隔湾曲症の手術について詳しくはこちらのページをご覧ください。
鼻中隔湾曲症に関するQ&A
鼻中隔湾曲症について、患者様からよくいただく質問についてお答えいたします。
Q.鼻中隔湾曲症とはどういう病気ですか?
鼻中隔とは鼻の中央を通っている、鼻を左右に分けている壁のことです。鼻中隔は上下を支える板状の骨とその間にある軟骨からできています。
Q.なぜ鼻中隔は曲がるのですか?
体の成長と共に、鼻中隔の骨と軟骨も成長します。骨の成長より軟骨の成長の方が盛んなため、軟骨は少し湾曲していきます。
Q.鼻中隔湾曲症は小さな子どもにもあらわれますか?
軽いものですと赤ちゃんにも観られることがありますが、年齢とともに割合が増え、児童は70%、成人では90%に鼻中隔の湾曲があらわれ、ほとんどの人にある程度の湾曲があります。ただし、症状がない場合は鼻中隔湾曲症とは診断されません。
Q.鼻中隔湾曲症の治療が必要になるのはどのような場合ですか?
鼻づまりをはじめとして、頻繁に鼻血が出る、嗅覚障害、味覚障害、頭痛、肩こり、ひどいいびきやくしゃみといった症状が鼻中隔の湾曲によって現れる場合は治療が必要です。
Q.鼻中隔湾曲症の治療はどのようなものですか?
鼻中隔が曲がっているという物理的な原因の病気のため、根治のためには手術が必要です。
鼻中隔の軟骨を切除し、真っ直ぐになるよう整える「鼻中隔矯正術」と呼ばれるこの手術を基本として、アレルギー性鼻炎などを併発して下鼻甲介に炎症がある場合は下鼻甲介の骨を切除する「粘膜下下鼻甲介骨切除術」が同時に行われます。
監修医師
- 老木 浩之
- ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 理事長
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
- ・医学博士